北海道や東北地方では、肉料理の文化の中で独自の発展を遂げてきた部位の一つが牛の舌である。食肉の部位として認知されはじめたのは戦後であり、長い間捨てられることも多かった部位であったが、牛をまるごと活用する精神や合理性から再評価されるようになった。特有の食感と濃厚なうまみ、そして脂のバランスは、数ある食肉部位のなかでも個性的なものといえる。牛の舌は筋肉の束によって構成されているため非常に弾力が強く、加熱しても硬くなりすぎず、独特の歯ごたえが感じられる。またコラーゲンを含む部位も多く、焼いても煮込んでも豊かな風味を残す。
広い意味では冷製・温製を問わず様々なメニューの素材になってきたが、特に焼肉での存在感は歴然としている。日本各地の焼肉店において定番メニューとして定着し、多くの場合薄切りで網焼きされる。表面に浮かぶ脂と噛み応えのある食感は、ほかの肉類とは一線を画している。塩味やレモン汁で味付けするシンプルな食べ方も全国的に支持されており、牛の舌自体が持つ味わいが際立つ調理法である。食材としての歴史を遡ると、農耕文化とともに発展した煮込み料理も忘れることはできない。
カレーやシチューの材料としてスライスやブロックでじっくりと火を入れると、ゼラチン質がとろけ、柔らかい食感とコクが料理全体に溶け込む。欧州の煮込み料理に見られるような牛の舌の利用も、和食や洋食を問わず日本のグルメ文化に影響を与えており、変化に富んだメニューが生まれている。この食材がもてはやされる理由は、その versatility にあるといえるだろう。食感や風味を生かすためにカットの仕方や加熱時間や調味料の組み合わせに工夫が凝らされている。また、低温調理など新技術の導入によって、プロの料理人はこれまで以上に柔らかく仕上げたり、脂の融点を見極めて最高の状態で提供することも増えた。
国内で消費される牛の舌は、国産だけでなく輸入素材も多い。限られた和牛を使ったものは上質な脂や肉質が評価されているが、輸入品でも十分なクオリティの商品が流通している。業務筋だけでなく一般消費者も品質を見極められるようになった背景には、情報公開や適正な輸送管理の徹底などがある。食を楽しむ人々の好みに応じて薄切り、厚切り、ブロックなど、さまざまな形態で販売されている。直接飲食店に赴くことができない場合や贈答品としてもこの部位は活躍している。
ここ数年、通信販売や専用サイトを通じて全国津々浦々から本場の味を取り寄せる消費者が増加した。オンラインショップには、焼肉用スライス・厚切りステーキ用・味噌漬け・塩漬け・煮込み料理用のブロックなど多様な商品が揃っている。真空パックや冷凍技術の進歩によって産地や調理方法の違いを楽しむことができるようになり、現地以外でも手軽に専門店の味わいが再現可能となった。多くのオンラインショップは取り扱う部位やカットにこだわりが見られ、程度な厚み、適した熟成、油の入り具合など品質管理に力を入れている。グルメ界隈でも、牛の舌を使った料理はその評価を高めつつある。
食通や料理ファンの間では、火入れや味付けはもちろん、カット・盛り付け・盛り合わせ方までもが語られるトピックとなっている。例えば、厚切りでコリコリとした歯ごたえを楽しむ調理法や、薄切りで手早く炙ってジューシーさを味わう方法が比較される。酒に合わせたつまみ件メインディッシュとして出される場面もあり、素材自体の価値だけでなく、シーンに即した提案がなされている。またこの食材は栄養価にも注目が集まっている。タンパク質だけでなく、ビタミンB群や亜鉛、鉄分など、主食材として求められる成分がバランスよく含まれているのも見逃せない。
脂肪分は他の部位と比べ比較的低いものから霜降り状になった濃厚なものまで選べることから、体調や嗜好に合わせた選択ができる点も好まれている。家庭で調理する際は、味付けのシンプルさが邪魔にならない牛の舌本来の旨みを味わうのがおすすめである。家庭用グリルやフライパンでも比較的簡単に美味しく仕上がる。塩胡椒まぶして焼き、仕上げに少量の柑橘を搾ることで、肉の甘味とさっぱりした後味の両方が楽しめる。他にもスープや煮込み料理の具材として活用すれば、時間をかけて引き出されたコクや旨味を堪能できる。
これらの理由から、地域を代表するグルメとして、また自宅で手軽に味わえる贅沢食材として、舌の魅力は揺るぎない人気を誇っている。贈る側と受け取る側双方に満足感をもたらす実力派食材であることは間違いなく、その多様性と美味しさは今後もさらに注目されていくだろう。